真空ガラススペーシアの構造について
真空ガラススペーシアは、二枚のガラスで構成されたペアガラスです。 一般的なペアガラスと比べ薄型設計なので、一枚ガラスと変わらずに見える事も特徴の一つです。(一般的なペアガラスは空気層部分に銀色のスペーサーが見えます)
標準仕様(網なし仕様)では、室外側にLow-eガラス、室内側に普通の透明ガラスを配置し中間層は0.2mmの真空層を保持しています。 但し、網入りタイプはLow-eガラスは室内側になります。
特徴1 端末部の密封処理も耐久性が凄い
一般的なペアガラスの場合、端末部の密封として使われるのは、有機系の接着材です。(画像中黒い接着剤です)有機系の接着材は汎用性が高く、 幅広く使われていますがアルミサッシの内部のような通気性が悪く、部材内湿度が高くなるような環境の場合、耐湿性の面で耐久性の弱点がありました。 一方、スペーシアの端末部に使われる接着材は、唯一の無機系の接着材です。(画像中黄色い接着剤です)
無機系の接着剤は硬度が高い事から耐衝撃性が弱点ですので、従来型の空気層の広さで断熱性能を上げる一般的なペアガラスには使用されませんでした。しかし、真空ガラススペーシアの場合にはガラス間0.2mm(はがきの厚み程度)。 端部に段差を設け接着面積を確保した真空ガラススペーシアだから使えたベストな組み合わせと言えます。 スペーシアの性能を発揮する上で最も重要な真空層を保持し続ける耐久性、これはこの接着材のおかげとも言うことができます。
特徴2 マイクロスペーサーがはさまっています
真空ガラススペーシアは、よく見ると小さな黒い点が規則的に入っています。 このマイクロスペーサーも高断熱のスペーシアの性能を支える大きな柱です。 二枚のガラス間が真空になっている=ガラス間に0.2mmの空洞部分があるのですが、このわずかな真空層は常に大気圧に圧迫されており、 そのままであれば二枚のガラスがあたってしまい、スペーシアというガラスが成り立ちません。
ここへステンレス製の円筒型のマイクロスペーサーを約2cmおきに縦横規則的に配置し、 ガラスを製造する事で二枚のガラス間が端から端まで0.2mmの均等な真空層を保持する事に成功した特許製品の最も重要な部分とも言えます。
特徴3 右上にはスペーシアの目印「保護キャップ」がついています
スペーシアには必ず室内側の右上に直径約15mmの保護キャップが付いています。 これはスペーシアの製造過程でガラスに穴を開けて、真空吸引した穴を塞ぐ金具のカバーです。 いわゆる真空ガラススペーシアである目印とも言えます。保護キャップは両面テープで貼り付けてあるだけですので、外してはいけません。
特徴4 真空率が高いから高断熱なのです。
真空ガラススペーシアのガラス間は真空層です。その真空率は1/1,000,000気圧。 これは二次加工品としての製造限界のスペックです。
このレベルは内部が真空構造の建材であるガラスブロックと同等。また、魔法瓶の性能とほぼ変わりません。 真空とは、大気圧より低い圧力の気体で満たされている空間の状態の事を言います。 どんなに精度高く真空引きをしても絶対真空は出来ません。 真空ガラススペーシアであっても、その空間には僅かな気体の分子が存在しますので、この真空率の高さが、高性能の証なのです
特徴5 真空構造のメリットについて
従来の中間層が空気またはガスのペアガラスの場合、 ガラスに風圧が掛かると内部の損失によって力が分散され 強度(耐風圧強度)は、一枚ガラス程度しかありません。このペアガラスの強度不足から、大きな風圧を受けるマンションの窓へ施工する場合、 耐風圧強度の不足が一番の懸念事項でした。
真空層の場合、ガラス間に空気がなく、断面2次モーメントの低下が極めて低く、 合わせガラスとほぼ同じ耐風圧強度を持ちます(真空層は接着された強度とほぼ同じ)。これによって戸建て、 マンションを問わず施工できる幅が広がったことがリフォーム用窓ガラスとして画期的です。 また、音の面でも真空層は共振を起こさない事でコインシデンス効果をクリアし、ガラスとして防音性能が高いことも真空層の恩恵のひとつです。
真空ガラススペーシアの歴史
1997年 真空ガラススペーシア発売
グレードは3つ「スペーシアスタンダード(Low-eガラスタイプ U値1.5W/㎡K)」「スペーシアベーシック(フロートガラスタイプ U値2.7W/㎡K)」「スペーシアグリーン(熱線吸収ガラスタイプ U値2.7W/㎡K)」
- 1999年 スペーシアベーシックが廃盤・スペーシアグリーンが廃盤
「スペーシアDX(デラックス)【熱線吸収+Low-eガラスタイプ】(U値1.5W/㎡K)」 - 2003年 スペーシアESの発売
「スペーシアES(遮熱Low-eガラスタイプ U値1.2W/㎡K)」 - 2007年 スペーシアDXの廃盤
- 2008年 スペーシアスタンダードからスペーシアST2(スタンダード2)へ品種改良。
Low-eガラスの品種変更(U値が1.5W/㎡Kから1.4W/㎡Kへ変わりました) - 2009年 スペーシアES廃盤
- 2012年 スペーシアST2の名称変更「スペーシア(名称のみ変更 U値1.4W/㎡K)」へ。
それと同時に「スペーシアクール(遮熱Low-eガラスタイプ U値1.2W/㎡K)」発売。 - 2013年 スペーシアクール改良(Low-eガラスの変更 U値1.0W/㎡K)
真空ガラススペーシアは、1997年に日本板硝子から発売されたのですが、そこに至るまでには84年もの時間がかかりました。 真空ガラスという発案は1913年に公表されたのですが、試作段階から製造における技術、設備の面でなかなか実現できませんでした。 大きな転機が訪れたのは、シドニー大学のリチャード・コリンズ教授が研究をはじめ、真空ガラスの技術へ邁進し、 真空の安定性、発生応力、熱の流れについて解明され、1989年にはじめて1メートル角の真空ガラスの製作に成功した事が、はじまりと言えます。
1994年、日本板硝子とシドニー大学が提携し、実際の商品開発を行い、1997年に真空ガラススペーシアが誕生したのです。
1997年の発売から現在である2013年までの16年間の間に、年表に見られるようなグレードの変更を繰り返して来たのですが、 従来の目的である断熱性のスペック(U値)は、全くといっていいほど変わっていません。 まずこのことが真空ガラススペーシアの構造から得られる高断熱性能の限界を意味し、このガラスのすごさがわかります。
唯一変わってきたのは、Low-e膜の変更による遮熱性と日射の反射・吸収・透過のバランスです。 日本は四季による温度差が大きいので、断熱・遮熱のバランスがとても重要であり、どちらかの性能だけが良ければ省エネに繋がるとは言えません。 また、これはスペーシアに限らず、ペアガラスにも言える事なのですが、 窓ガラスの大前提とも言える「熱割れ」をしにくいLow-e膜の改良という面でも更新されて今の製品へと至ります。
第2回ものづくり日本大賞 経済産業大臣賞 受賞
「ものづくり日本大賞」は、日本の産業・文化を支えてきた「ものづくり」を継承・発展させるため、その中核を担う人材を広く社会に知らせることを目的とした表彰制度です。スペーシアの開発チームは、真空のもつ断熱特性を窓ガラスに応用し、ガラス製法に関する日本の競争優位を高めたとして経済産業大臣賞を受賞しました。
主催:経済産業省、国土交通省、厚生労働省、文部科学省、一般社団法人 日本機械工業連合会
第29回環境賞優良賞
主催:公益財団法人 日立環境財団/日刊工業新聞社 後援:環境省
JAPAN DIY SHOW '98 TOKYO 「人と環境にやさしい商品」人気投票 銀賞
主催:社団法人 日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会
'97年日経優秀製品・サービス賞 優秀賞 日経産業新聞賞
主催:一般社団法人 日本真空学会
第9回省エネ大賞 資源エネルギー庁長官賞 受賞
省エネ大賞は経済産業省の外郭団体である一般財団法人省エネルギーセンターが主催。 資源やエネルギーの効率的な利用をテーマに幅広いジャンルのなかから省エネに優れていると認められたものが選ばれる、一年に一度の賞です。スペーシアはガラスに真空層をつくった世界初の技術と省エネ効果、リサイクル性、断熱性能などが高く認められました。
世界のデザイナーが選んだ World Architecture News「Product of the Year 2011」 受賞
平成25年度省エネ大賞 (製品・ビジネスモデル部門)
省エネルギーセンター会長賞 受賞・・・スペーシア21 遮熱クリア 省エネ大賞は、優れた省エネ活動事例や技術開発等による先進型省エネ製品等を表彰することで、省エネルギー意識の浸透、省エネルギー製品の普及促進等に寄与することを目的とし、一般財団法人省エネルギーセンターが主催(後援:経済産業省)しています。 2013年11月に発売した複層真空ガラス「スペーシア21®」遮熱クリアタイプは、従来品と同じ厚さながらも断熱性能を約10%向上(熱貫流率0.7W/㎡・Kを実現)。 さらに日射遮蔽性能を付加した国内最高水準の断熱窓ガラスです。 わずか18.2ミリの厚さでグラスウール50mm(24kg)にも匹敵する高断熱性能に加えて、薄型設計を実現する当社独自の真空ガラス「スペーシア®」を用いたハイブリッド構造が高く評価され、受賞に至りました。
L2-Tech2015年度 夏 認証製品・・・スペーシア21 遮熱クリア
L2-Tech認証制度は、環境省が「エネルギー消費量削減・二酸化炭素排出削減のための先導的な要素技術、またはそれが適用された設備・機器等 のうち、エネルギー起源二酸化炭素の排出削減に最大の効果をもたらすもの」として、各設備・機器等の最高水準をL2-Tech水準として公表し、 L2-Tech水準に基づきメーカー製品の認証を行う制度です。